北極圏の空港を太陽光発電で運営するプロジェクト、などと聞くと、奇抜な実験プロジェクトのように思えるかもしれません。しかし、ノルウェーのスヴァールバル諸島では重大な使命を帯びた真剣なプロジェクトです。ノルウェー本土と北極の中間に位置するスヴァールバル空港は、世界最北端の商業空港であり、さらに北へと向かう研究者にとっては空の旅の終着駅です。
スヴァールバル諸島は、かつてはさらに北上して鯨脂を捕る捕鯨船の基地でした。現在、島の産業は炭鉱から調査や観光に移行しています。
しかし、この小さな空港はこれまで電力のほとんどを石炭による火力発電所に依存しており、ノルウェー本土の全空港を合わせた二酸化炭素排出量の20%近くを占めていました。そのためスヴァールバル空港の当局者はかねてから、石炭で発電した電力の消費量を減らし、できる限り太陽光発電に切り替えたいと考えていました。
それでも、スヴァールバル空港の滑走路は永久凍土の上に建設されており、格納庫は文字通り地面に凍り付いています。1年のうち冬の3か月間は暗闇に包まれます。ここは本当にソーラーに適した場所なのでしょうか?
常識とは裏腹に、答えはイエスです。
ソーラーパネルの発電量は、気温が高いときより低い方が多くなります。しかもマキシオンのパネルなら、さらに効果を発揮します。
日照の少ない場所で太陽光発電の出力を最大化
マキシオンパートナーのPower Controls ASは、北極圏でソーラーパネルを設置してきた永年の実績を持っています。チームはこれまで、3段階に分けてスヴァールバル空港にソーラーを導入し、空港ターミナルの正面と屋根に合計40kW、さらに格納庫に100kWのソーラーパネルを設置しました。これらのシステムを合わせて年間75,000キロワット時(kWh)以上のクリーンエネルギーを生成しています。これは空港の電力使用量の10%を相殺するのに十分な量であり、北極圏における年間70トンの二酸化炭素排出量削減を達成しました。
システムは必要を上回る出力を上げていますが、Power Controlsチームにとっては特に驚くことではありませんでした。従来型のパネルよりも多くの電力を生成するマキシオンパネルは、パネルの設置から最初の25年で、同じ面積で最大35%の発電量増加をもたらします。1 サンパワー400W、変換効率22.6%、同サイズアレイの従来のパネル(310W単結晶PERCセル、変換効率19%、約1.64m²)と比較
「PVシステムの発電量の統計データについては、ヨーロッパ中の研究者から問い合わせがありました。この緯度の高さで、ドイツの一般的な発電量の70%ものエネルギーを生成しているという事実には、誰もが驚きました」とPower ControlsのCEO、ダグ・ハルヴォルセン氏(Dag Halvorsen)は説明しています。
ハルヴォルセン氏によると、スヴァールバル諸島の電力価格はノルウェー本土の3倍であるため、スヴァールバル諸島でのPVの設置は、平均して8年以内に投資を回収できる良い投資になるとのことです。
空港ターミナルの正面にマキシオンパネルを設置するPower Controlsチーム。
脆弱な生態系で100%再生可能エネルギーに移行
ホッキョクグマをはじめとするさまざまな絶滅危惧種が生息するこの繊細な自然環境では、二酸化炭素の排出量を大幅に削減しながら、地域の電力需要を持続的かつ低コストで満たす方法を見つけることが、ますます重要な課題とされています。石炭の埋蔵量は早ければ2025年には枯渇する可能性があります。
空港の東5kmに位置する町、ロングイェールビーンでは、いまだに石炭による電力が主に供給されていますが、代替手段を見つける必要があります。北極圏では風力発電と太陽光発電が機能し、一日中暗闇に包まれる冬でも、風力が十分なクリーンエネルギーを生み出しています。夏は、日照時間が24時間となる「白夜」を最大限に活用できます。
空港では2020~21年に4段階目のPV設置工事が予定されており、竣工すると太陽光発電の出力は4倍になる予定です。このPVシステムで十分な電力を生産し、夏季には地元の電力網に一部送電することで、ロングイェールビーンが使用していた石炭火力発電所からの電力消費量を削減することになります。
適切なテクノロジーがあれば、極寒の地でも、太陽光発電をエネルギーミックスの主要な柱として組み込むことができるのです。これは北極圏のホッキョクグマにとっても、私たちにとっても朗報です。
プロジェクト概要
プロジェクトタイプ:北極圏の空港
システムのサイズ:140kWマキシオンパネル
課題: | ソリューション: | |
| 高いエネルギー需要 | |
| 遠隔地における長期的な信頼性 | |
| 課題となる日照条件 |
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| 大雪そして氷点下の気温が続く |
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